満足度

前回の『まぐれ』に引き続き、タレブ本を読んでみました。

今回も扱うテーマは不確実性とリスクに関するものですが、『まぐれ』と比べると少し哲学チックなものとなってます。

本書の題である「ブラックスワン」とは、想定できない極端な出来事のことです。

これは白鳥に黒いものはいないと長年信じられてきた中、オーストラリア大陸で黒い白鳥が発見されたことにより、常識が大きく覆されたことに由来します。

本書を読めば、ぼくたちがいかにわかっていないことをわかっていると思いこんでいるのか、それをわからせてくれますよ。

書評

ブラックスワン(黒い白鳥)の性質

  1. 予測できないこと
  2. 重大な影響を及ぼすこと
  3. 後から振り返ると説明がつけられること

最近でいうと、リーマンショックがブラックスワンでしたね。

ほとんどの人が予測できず、世界的な不況をもたらしました。

そして、たくさんの予測屋さんが後付けで理由を述べました。

予測屋さんは、予測は外すし、理由も後付けでよくあんなにいけしゃあしゃあとしてますよね。

彼らの情報はノイズに過ぎないので遮断するのが賢明な判断だといえます。

月並みの国と果ての国

著者はこの世を月並みの国果ての国に分けて考えています。

これは本書を読むうえでとても重要な概念です。

詳しくは本を読んでほしいのですが、ザックリ言うと月並みの国というのは拡張が不可能で、黒い白鳥に左右されず、ベル型カーブが使えます。

この月並みの国に属すものは、身長や体重、死亡率などが挙げられます。

果ての国は拡張が可能で、黒い白鳥に左右され、ベル型カーブは使い物になりません。

果ての国に属すものとしては、財産額、地震の大きさ、金融市場、経済データ、商品価格なんかがそうです。

月並みの国のものは、物理的な量に対応するため、統計学を使うなどして観察していけば未来がどうなるのか予測することができます。

それに対して果ての国のものは、偶然に支配されているので過去の情報から予測をするのは困難です。

ぼくたちの住んでいる現代では果ての国の占める重要度がかなり大きいといえます。

七面鳥の話

七面鳥がいて、毎日エサをもらっている。エサをもらうたび、七面鳥は、人類の中でも親切な人たちがエサをくれるのだ、それが一般的に成り立つ法則なのだと信じ込んでいく。
(中略)
感謝際の前の水曜日の午後、思いもしなかったことが七面鳥に降りかかる。七面鳥の信念は覆されるだろう。
(中略)
七面鳥は、昨日の出来事から、明日何が待っているか推し量れるだろうか?たぶんいろいろわかることはあるだろう。でも、七面鳥自身が思っているよりも、わかることはちょっと少ない。そして、その「ちょっと」で話はまったく変わってくるかもしれないのだ。

七面鳥からすれば、毎日エサをもらっていればエサをくれる人たちが親切な人たちだという確信が日に日に高まっていきます。

殺されてしまう日が近づいているというのに、その日が近づくにつれて安心感が高まっていくのです。

この話から、過去のことから学んだことというのは間違っていたり無関係だったりして、ゼロどころかマイナスの価値を持つことがあるということが言えます。

ぼくたちは過去のことから学べば未来を予測できると思ってしまいますが、過去のことを学んでしまったばかりに間違ってしまうということを頭に入れておかなければなりません。

特に果ての国では過去の経験が命とりになることがあるので要注意です。

生存バイアス

あなたはもしカジノでギャンブラーが大儲けしていたらどう思いますか。

お金持ちのギャンブラーを見て、ギャンブルすれば儲かるからギャンブルはいいことだと思うでしょうか。

それはおかしいですよね。

儲けているギャンブラーの裏にはたくさん損をしているギャンブラーがいるからです。

しかし彼らの姿はなかなか見えてきません。

破産した人というのはそもそももうギャンブルができませんし、少しでも損をしてしまった人というのは儲けた人よりもひっそりといているものです。

このように見えるものばかりにだけ目を向けていると大事なことを見落としてしまい、判断を誤ります。

これはいわゆる生存バイアスによるものです。

ぼく自身生存バイアスというものを知り、それを意識して以降大事なことを見落とすことが減りました(と思いますw)。

この生存バイアスを意識していれば思わぬ落とし穴を避けることができるのではないでしょうか。

知識に関するうぬぼれ

ある推測を通して、自分がどれくらい自分の知っていることを知っているのかを試す実験が行われました。

その結果、ほとんどの人が間違った推測をしていることがわかりました。しかも専門家のほうがより誤った推測をしていたのです。

知識があればあるほどいい推測ができるように思えますが、それと同時にうぬぼれてしまうためか推測がうまくいかないようですね。

この実験から、人が本当に知っていることと、その人が自分で知っていると思っていることの差というのはぼくたちが思っていた以上に大きいといえます。

そして、それはそのものに精通しているほど顕著です。

自分が詳しいと思っている分野ほど自分の知っていることに関してうぬぼれていないか気を付けたほうがいいですね。

情報は知識に悪い

誰かに情報を与えれば与えるほど、その人が立てる仮説も多くなり、どんどん間違った方へ進んでいく。
でたらめなノイズを見て、それを情報と勘違いするのだ。

問題は、私たちの思いつきはまとわりつくということだ。
いったん仮説を立てると、私たちはなかなか仮説を変えられない。
だから仮説を立てるのは先延ばしにしたほうがいい結果になる。
弱い証拠にもとづいて意見を決めないといけない場合、後から自分の意見に対立する情報が入っても、私たちはそれをうまく解釈できない。
新しい情報のほうがどう見てもより正確であっても、だ。

これは確証バイアス、もしくは追認バイアスというものですね。

人は一度頭の中で決めてしまったことというのは仮説であってもそれに固執してしまいます。

そして、その仮説を裏付ける証拠ばかりを採用してしまって、反証するものは無視してしまうのです。

それだと間違った判断をしてしまうので、著者は仮説を立てるのは強い証拠が出てからだと言ってるんですね。

個の考え方は、弱い証拠がそろった段階から仮説を立てる『仮説思考』とは違います。

理論上は仮説思考は理に適っていますが、人間である以上バイアスを排するのは困難です。

しっかりシステム2を働かせて、自分の意思はバイアスによるものではないか常に疑ってかかる必要があります。

※システム2はカーネマンが提唱する考えです。詳しくは『ファスト&スロー』をご覧ください。

経験上の現実について得る情報が詳しくなればなるほど、目にするノイズ(つまり逸話)も多くなり、それを情報だと勘違いしやすくなる
私たちが目立つものに惑わされるのを思い出そう
週刊誌を読むより、ラジオで毎時のニュースを聞くほうがずっとたちが悪い
間隔が長い方が少しは情報をろ過できるからだ

情報収集は大事ですが、世の中の情報は玉石混交です。

多くの情報に触れてそれらを見極めるというのも大事ですが、それでも人間はノイズに惑わされてしまいます。

それならいっそ、そもそも情報を遮断するというのも一つの手ですね。

期待値よりも大事なこと

川の深さが平均で4フィートなら渡ってはいけない。
遠くへ旅行に行くとき、行き先の平均気温は同じ華氏70度だとしても、誤差率の期待値は40度だと言われた場合と、誤差はたったのプラス・マイナス5度だと言われた場合では、準備していく服装が全く違うだろう。

この話が示すとおり、期待値が同じでも誤差のばらつきが大きく違えば、まったく違うものになります。

期待値が自分の有利なものであっても、場合によっては大きく不利な結果になることもあるので、期待値だけでなく誤差もしっかり考慮しなければなりません。

賢者とは

「賢者とは、将来に起こることが見える人のこと」とよく言う。
でもたぶん、賢者とは、遠い将来に起こることなんか見えるもんじゃないと知っている人のことだ。

ソクラテスが言っていた無知の知ですね。

今も昔も賢者のありようは変わりません。

この本をどう活かすか

個人的には『まぐれ』よりテンポがよくて読みやすく感じました。タレブ本を一度読んでいるので前提知識があったからですかね・・・

さて、とりあえずノイズが多いニュースや新聞を見る時間は削りましょう。そしてその時間を本を読む時間に充てていけば限りなくよい情報や知識を得ることができるはずです。

それからバイアスにかかっていないか自分を監視する。

あとは、期待値よりもばらつきに気をつけることが大事ですね。

これまでぼくは期待値にばかり目を向けていましたが、リスクマネジメントするうえでは誤差を考慮するということがずっとずっと大事です。そうすれば、ブラックスワンが現れたときに少しはマシになるのではないでしょうか。

 

『まぐれ』と内容が重複するところもありますが、本書のほうがより踏み込んだものとなっています。

また、著者を世界的に有名にしたのはこの『ブラック・スワン』で、評価も高いです。

ものすごくいい本なので、一般人やトレーダーから専門家の方々まですべての方にオススメします。

 

[下]もあって、でこちらも後日レビューします。
元々原著は1冊だったのですが、本が分厚くなるので2冊に分けたものと思われます。
2冊で1冊の内容となっているので購入する際は両方の購入をオススメします。

本書と『まぐれ』、どちらを先に読もうか迷っている方にぼくは『まぐれ』のほうをオススメします。

どちらが先とかそういうものは本来ありませんが、『まぐれ』のほうが一冊にまとまっているということと、やはり最初に書かれた本であるからです。

迷ったらこっちを読んでみてください。