満足度

前回の『ブラック・スワン[上]』の続きです。

基本的に内容は上巻の延長ですが、本書では上巻以上にベル型カーブを用いた「科学」をこき下ろしてます。

また、トレーダーでもある著者の具体的な投資戦略にも触れられており、日常生活にも応用できるブラックスワン対策が学べますよ。

書評

バーベル戦略

バーベル戦略は著者が実際に行っているブラックスワンを利用した投資戦略です。

バーベル戦略とはこんなやり方だ。
黒い白鳥のせいで、自分が予測の誤りに左右されるのがわかっており、かつ、ほとんどの「リスク測度」には欠陥があると認めるなら、とるべき戦略は、可能な限り超保守的かつ超積極的になることであり、ちょっと積極的だったり、ちょっと保守的だったりする戦略ではない。

(中略)

お金の一部、たとえば85%から90%をものすごく安全な資産に投資する。
たとえばアメリカ短期国債みたいな、この星で見つけられる中で一番安全な投資対象だ。
残りの10%から15%はものすごく投機的な賭けに投じる。
あらん限りのレバレッジのかかった投資、できればベンチャー・キャピタル流のポートフォリオがいい。

大半は超保守的に、残りの少しは超積極的な投機を行う。

このようにやっていれば、ブラックスワンに襲われても最悪の場合は資産の10%から15%を失うだけで済みます。

ブラックスワンによってもたらされる害は想定することができませんが、バーベル戦略では事前にリスク(ブラックスワン)にさらす資産を決めているので、最悪の事態を想定することができるのです。

それに対してリターンは、とても投機的な10%から15%の資産がいい方のブラックスワンで増える可能性があるので、こちらは青天井です。

リスクは限定的なのにリターンは非限定的。

これはとても使える投資戦略ではないでしょうか。

不確実性の本質

とても稀な事象の確率は計算できない。でも、そういう事象が起こったときに私たちに及ぶ影響なら、かなり簡単に見極められる(事象が稀であるほどオッズも曖昧になる)。ある事象が起こる可能性がどれぐらいかわからなくても、その事象が起こったらどんな影響があるかはちゃんと把握できることがある。地震が起こるオッズはわからないが、起こったらサンフランシスコがどんなことになるかは想像できる。意思決定をするときは、確率(これはわからない)よりも影響(これはわかるかもしれない)のほうに焦点をあてるべきなのだ。不確実性の本質はそこにある。

最悪の事態になる確率はわからなくても、最悪の事態になったときにどのような影響がでるのかを把握することが、不確実性が満ち溢れている現代で生き残る道ということですね。

いくら考えてもわからないものはわかりませんし、自分がコントロールできることだけにフォーカスすればブラックスワンに振り回されることはなくなります。

壮大な知的詐欺

著者はベル型カーブは果ての国ではまったく使い物にならないと再三言っています。詐欺だとまで言っていますが、それはあながち間違っていませんw

ベル型カーブにもとづいた不確実性の測度は、極端な事象が起こる可能性とその影響を無視します。
しかし、ベル型カーブによれば100年に1度起こることでも、この世では本当に100年に1度かわかりませんし、それが起きた場合の影響は無視できないほどの大きさです。
だからベル型カーブはまったく使えない詐欺なのです。

ベル型カーブが使い物にならない以上、標準偏差や相関や回帰といったものはまったくあてになりませんよね。
ポートフォリオを相関係数や標準偏差で作るという戦略もありますが、この果ての国ではナンセンスなのかもしれません。

この本をどう活かすか

いい方のブラックスワンを利用するというのはこれまで考えてきませんでした。ぼくもポートフォリオの5%くらいは宝くじオプションを買っていい方のブラックスワンを待つ戦略に切り替えます(オプション全然わからない(ノД`)・゜・。)。

あと著者自身も言っていますが、バーベル戦略は日常生活においても使えます。
たとえば、サラリーマンだったら自分の時間や労力の85%から90%は会社の仕事に費やし、残りの10%から15%は起業といったリスクはあるが当たればリターンが計り知れないことに費やすといったふうにするのです。
このようにすれば、サラリーマンという安定した地位、収入がある中でいつかドカンと成功する可能性が高まります。

また、正規分布(ベル型カーブ)を用いてリスク管理をするというのは、見えないリスクが大きいので危なすぎるといえます。見えないリスクに対処する方法は今のところはバーベル戦略が最適解なのかもしれません。

しかし、ぼくは投資においてバーベル戦略を全面的に採用する気にはなりません。
資産の85%から90%をアメリカ短期国債で持つなんて退屈すぎるからです。
それに、長期的に見れば債券より株のほうが儲かると何かに書いてありました(『敗者のゲーム』か『ウォール街のランダムウォーカー』に)。
だからぼくは株を買います。

不確実なことでいっぱいの世の中ですが、
悪い方のブラックスワンには体を小さくして身構え、いい方のブラックスワンには体をめいいっぱいさらしていく
そうすれば、人生はぼくたちの思いのままです。

上巻もよろしく。 『ブラック・スワン[上]