満足度

これまで睡眠本は『スタンフォード式 最高の睡眠』と『SLEEP』などを読んできましたが、新たな知見を得るべく本書を読んでみました。

著者が提唱している睡眠は「3時間睡眠」と超短眠で、ものすごく異端です。

しかしそれをもってトンデモ本と決めつけるのは時期尚早。

実際に読んでみると、著者の主張はどれも筋が通っているものばかりで純粋におもしろく、「たしかに睡眠は時間じゃないよな!」と思わせてくれました。

 

著者の言うことは理論的に正しいです。

たとえば、著者は「睡眠は精神衛生上悪い」としていますが、その理論はザックリ以下の通りです。

「寝る前は『明日がんばるぞ!』とはりきっていても、寝起きになると寝る前のやる気がなくなっている(うつっぽい)。

だから睡眠は精神衛生上悪い。」

すごく理論的ですよね。

寝る前と後で精神状態がガラリと変わってモチベーションが下がっているということは誰もが経験したことがあるはずです。

こんな感じで本書に書かれていることはどれもこれも筋が通っています。

ただ、エビデンス(科学的根拠)が弱いです。

これでは「正しい」とは言えません。

しかし、「エビデンスが弱い」のは睡眠の世界で定説とされていることにもいえることです。

たとえば、「7時間睡眠が最も長生きできる」というのが定説ですが、その根拠には欠陥があることを著者は指摘しています。

権威ある機関が時間とお金をかけて出した結論なのだから、信じてしまうのは仕方がありません。

しかしこの研究、 根本的なところに欠陥 があります。

そもそも、調査対象は入院患者。

その結果を一般化できるわけがありません。

激痛に苦しむ患者の睡眠時間は短くなりますし、ベッドから動けない状態の患者は非常に長くなるというのは、一般的な感覚からして納得できるはずです。

ところが、この研究結果は骨折などの軽微な症状から難病の方まで、すべて一緒にして出した統計なのです。

そのうえ、そもそも病院という空間自体が特殊です。その結果を日常の生活者に当てはめて考えることはできないはずです。

調査対象がすべて入院患者だったとは。

「なるほど、定説もあてにならんな」となりますよね。

 

また、著者の主張にまったくエビデンスがないわけではありません。

カスケイドンの実験やオズワルドの実験、ボルンの研究などの実験結果を示しています。

前日の睡眠時間が短いという認識そのものが睡眠不足を誘発しています。

メアリー=カスケイドンは、陽の光が入らず、時計もない部屋で被験者を生活させる実験をしました。

2つのグループを用意し、いずれのグループともに3時間睡眠をとらせました。

しかし、一つ目のグループには「8時間眠っていた」と伝え、もう一方のグループには「3時間しか寝ていない」と伝えました。

結果は、 8時間睡眠と認識している一つ目のグループはほとんど睡眠不足を訴えなかった のですが、3時間睡眠と認識しているグループの全員が睡眠不足を訴えました。

睡眠不足と睡眠時間の因果関係に疑いを持たせる実験結果だといえるでしょう。

これは「思い込み」が睡眠不足を生む良い例ですね。

このように、異端とされている主張にも根拠があります。

異端だからといって頭から間違っていると決めつけるのはそのほうが間違っているし危険です。

 

睡眠に関してはブラックボックスでいまだにわからないことが多すぎます。

睡眠学の権威でさえ「なぜ寝る必要があるのか?」という質問に対しては「眠くなるから寝るんだ。それ以上はわかっていない」としか答えられません。

「1日にどれだけの睡眠時間が必要なのか?」という質問に対しては、「日中に過度な睡魔が発生しない程度眠ればいい」という、誰でも答えられる回答をしています。

このように睡眠についてはっきりわかっていない以上、たとえスタンフォード大学の説であっても数年後数十年後には覆る可能性が十分あります。

 

常識に対して「これって違うんじゃね?」と疑問を投げかけている本はどんどん読むべきです。

同じような情報しか収集しないと考えが偏って視野の狭い人間になります。

もちろん本書も読むべき1冊です。

睡眠の「メリットと思われるもの」と「デメリットと思われるもの」の両方を知って最後は自分の頭で考えることが大切です。

睡眠について興味がある人、睡眠時間を短くしたいという人はぜひ読んでみてください。